三重① 伊勢型紙|布の美しさを彫る職人たち

 布の旅をしていたら、三重県で「紙」に出会った。

三重県鈴鹿市の白子(しろこ)に伝わる伊勢型紙。着物などの布に模様を染めるための、精巧な道具らしい。
布を染めるのに、まず紙を彫る。なんとも面白い世界。

■ 伊勢型紙って何?

和紙を柿渋で貼り合わせた丈夫な「渋紙」に、細かな文様を彫り抜いたもの。
染色職人はこの型紙を布に置き、防染糊を使って模様を写します。糊を置いた部分は染料が入りにくくなり、染め上げた布に美しい文様が現れます。
伊勢型紙は、江戸小紋や浴衣など、日本の染色文化を陰で支えてきました。

■ 四つの彫刻技法

伊勢型紙には、代表的な四つの技法があります。
錐彫り(きりぼり)
小さな丸い穴を無数に開ける技法。細かな点が集まり、繊細な模様になります。
突彫り(つきぼり)
細い刃を前へ押し進めながら、曲線や複雑な文様を彫ります。
道具彫り(どうぐぼり)
花びらや菱形など、文様に合わせて作られた刃物で形を抜きます。
縞彫り(しまぼり)
定規を使って細い縞を彫る技法。均一な線を生み出す高度な技術です。
彫り抜かれた型紙は、それ自体がまるでレースのよう。
道具でありながら、美しい工芸品でもあるのです。

■ 白子から全国へ

伊勢型紙が発展したのは、伊勢湾に面した白子の町。
江戸時代には型紙商人が各地の染色産地を訪れ、職人の彫った型紙を届けていました。
三重で彫られた模様が、江戸や京都などで布に染められる。
一枚の着物の向こう側には、離れた土地の職人たちの仕事がつながっていたのです。

■ 伊勢型紙の今

現在も伝統技法は受け継がれています。
着物の染色に使われるだけでなく、型紙そのものを生かした照明やインテリアなど、新しい表現も生まれています。
紙を彫る技術が、時代に合わせて新しい居場所を見つけているのです。

■ 旅で集める、日本の色 No.012

柿渋色(かきしぶいろ)
柿渋を思わせる、赤みを含んだ落ち着いた茶色。
柿渋は未熟な渋柿から作られ、古くから紙や木材などの補強・防水に利用されてきました。
伊勢型紙の渋紙にも欠かせない材料です。
今回選んだ柿渋色は、染め上がった布の色ではなく、その美しさを生み出す道具の色。



感じたこと

布を染める人がいて、そのための型紙を彫る人がいる。
一枚の布の美しさは、一人の職人だけで生まれるものではない。
布の旅で、そんな当たり前のようで知らなかった世界に出会った。

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